日本では2021年1月14日、現代美術家・山本伸樹氏と奈良県大和郡山市商店街組合とで著作権侵害を争点に行われていた「金魚電話ボックス裁判」の控訴審判決が下りました。
この度の判決を機に、金魚電話ボックス裁判の経緯・概要をまとめてみました。
また同じく電話ボックスを利用したアート作品で、海外(フランス)の芸術家が制作した電話ボックス水族館の動画もご紹介します。
金魚電話ボックス裁判の経緯・現代美術家 山本伸樹氏の作品
「金魚電話ボックス」訴訟、芸術家が逆転勝訴 大阪高裁https://t.co/VVLoN8m79i
— 朝日新聞名古屋編集局 (@asahi_nagoya) January 14, 2021
画像の左側にあるのが山本伸樹さんの作品です。
1998年に福島県いわき市在住の現代美術家・山本伸樹さんが、電話ボックスを巨大水槽に見立てる作品を制作し発表しました。
電話ボックスの中に金魚を泳がせ、ボックス内にある電話の受話器からは気泡が生じるという独創的な作品を発表しました。
気泡が生じるということで電話が通話されているというメッセージがあった訳ですね。
山本伸樹氏さんはその後、制作した金魚電話ボックスを全国各地で展示して行きました。
金魚電話ボックス裁判の経緯・大和郡山市商店街が設置した作品
上記比較画像の右側にあるのが2014年に奈良県大和郡山市の郡山柳町商店街協同組合が設置した作品です。
このオブジェは、京都造形芸術大(京都市左京区)の学生グループが2011年に「テレ金」というタイトルで発表した作品です。
それを大和郡山市郡山柳町商店街協同組合が譲り受けたのです。
そして市内に2018年まで展示しました。
奈良県大和郡山市は「金魚の産地」として全国にアピールしたかった訳です。
金魚電話ボックス裁判の経緯・山本伸樹氏が商店街側を訴える
現代美術家の山本伸樹さんが「金魚電話ボックス」が大和郡山市にも存在していることを知ったのは2015年でした。
山本伸樹さんは、奈良県大和郡山市の柳町商店街組合が無断で展示していることに対して抗議しました。
現代美術家の山本伸樹さんは組合側に作品の著作権を認めるよう求めていました。
一方、組合側は著作権侵害ではないと主張します。
お互いの主張が繰り返される事態になりましたが、組合側はトラブルを避けるため、2018年4月に作品を撤去しました。
その後、山本伸樹さんは2018年9月19日に、オブジェを設置した奈良県大和郡山市の柳町商店街組合を相手取り、330万円の損害賠償などを求める訴えを奈良地裁に起こしました。
山本さんは19日、奈良市内で記者会見し「撤去を望んでいたわけではなく、作品の著作権を認めてもらうことが目的。
著作権を侵害され、苦悩している美術家は少なくない」と主張。
同組合の宮沢秀典理事長は「訴状が届いていないので、コメントできない」としている。
(2018年9月19日産経新聞からの引用)
金魚電話ボックス裁判の経緯・山本伸樹氏の逆転勝訴
山本伸樹さんが著作権侵害として商店街側組合に330万円の損害賠償などを求めた第一審は、奈良地裁が山本伸樹さんの訴えを退ける判決となりました。
その後、山本伸樹さんは控訴し2021年01月14日に大阪高裁で逆転の控訴審判決が下りました。
山田陽三裁判長は著作権侵害を認定し、山本さんの訴えを退けた一審・奈良地裁判決を変更し、商店街側に計55万円の支払いなどを命じました。
2019年の一審判決は、山本さんの作品を「発想はアイデアにとどまり、著作権保護の対象とならない」とした。
高裁判決は、受話器から気泡を出す表現について、音声を通すための受話器に空気を通し、気泡を出すことによって通話を想起させる表現は創作性があり、作品全体が著作物と認められると判断。
類似の作品をつくった商店街側の著作権侵害を認定した。
(2021年1月14日 朝日新聞からの引用)
山本伸樹さんは今回の判決について、全面的に自分の主張が認められた完全勝訴と述べています。
一方の商店街組合側は「対応は今後調整する」と述べています。
海外にもあった電話ボックス水族館・フランスのリヨン
日本の金魚電話ボックスを制作した現代美術家・山本伸樹さんとは別に、フランスでも電話ボックス水族館をアート作品として制作した二人の芸術家がいました。
使われなくなった電話ボックスを水槽に?
照明デザイナーのBenoit DeseilleとアーティストのBenedetto Bufalinoによるアート作品。
フランスのリヨン。pic.twitter.com/W3krMfOqxF— 5秒で学べるアート@スマホケース販売中 (@art_matomen) March 15, 2020
フランスのアーティストであるベネデット・ブファリーノ氏(Benedetto Bufalino) と
同じくアーティストであり照明デザイナーでもあるブノワ・デセイユ氏(Benoit Deseille)との合作作品です。
フランスのリヨンで好評を得た電話ボックス水族館ですが、その後各地に展示されました。
・2009年ビアリッツ(フランス)
・2009年ポートルイス(モーリシャス)
・2011年ゲント(ベルギー)
上記のYouTube動画はフランスで電話ボックス水族館を移動しているところを撮影したものです。
金魚電話ボックス裁判まとめと海外の電話ボックス水族館動画についての感想
アート作品における著作権侵害はよく争われることだと思います。
作品を鑑賞する一般人にとってはアート作品を観る楽しみが満たされれば良い訳です。
しかし、作品を制作するアーティストにとっては死活問題です。
今回の金魚電話ボックス訴訟について言えば、山本伸樹さんが「著作権を侵害され、苦悩している美術家は少なくない」ということを主張するため裁判に至ったのです。
アーティストたちの活動が裁判などに時間や労力を割かれ、本来の作業に支障が生じることは大変もったいないことだと思います。
芸術分野の発展を願う者としては、早く裁判が終了し芸術家本来の活動が行われることを祈っています。
今後商店街組合が上告せずあるいは第三審で著作権が最終確定された場合、日本の著作権が海外にどれだけ効力を及ぼすのかは分かりません。
しかし、著作権の問題抜きにして観てもフランスのアーティストの作品も大変素晴らしいと思いました。
以上、金魚電話ボックス裁判の経緯とフランスにもあった電話ボックス水族館について、まとめてみました。
最後までお読み戴き有難うございました。